風呂上がりの一杯……心臓破れそう
なんとも言えなくなる、重たい言葉を耳にして、呆然としていると、目の前の吊り目は――気にする様子も見せず。
「そうだぜ? 1番上の兄貴……いや、2番目の兄貴……だったか? どっちか……くたばったって話だったよなぁ……どっちだっけか……う~ん。まぁ、イイか。兎に角、どっちかくたばってんのは間違いねぇしな♪」
キンキンに凍り付いた大ジョッキに、お気に入りのレッドブルを並々と注いで、一息に飲み干しにかかる。
「……お、お前。大丈夫……なのか?」
一気に空いたジョッキに驚いて、身体なりを? 心配すると――俺の言葉の意味が理解できないと言った顔で
「なにが?」
きょとんとして聞き返して来る始末。
(……そうだね。お前ら、そう言う生き物なんだものね)
「なんに……せよだ。ツモイ。あんたはな? あの貴族の娘の……え~っと……デズデモーナか(一緒に暮らしてるんだから、いい加減覚えろよ……)、あいつの何に頭悩ませてんのかは、知らねぇけどな? いちいち細けぇんだよ」
「お前の親父みたいなこと言ってんじゃねぇよ。俺は、そんな風に割り切れないんだっつーの」
グラスに注いだウーロン茶に口を付けると、今度はウルリーカが信じられないものを見る目を向けた。
「……なぁ。それ……美味いのかよ?」
「え? まぁ……ふつー?」
飲み慣れた味としか答えようも無い。そんな俺の返事を聞かされた彼女は「森の落ち葉が浸かった水溜まりの水みたいなもんが美味いとか、理解できねぇ……」舌を出して顔を背ける。
やはり、こちらの世界、シルウェストリスでは、日本で生まれ育った俺の価値観と言うものは――なにひとつとして、通用しないものなのかも知れない。
 




