そう……彼女は思い詰めて居たに違いないのだ
取っ組み合いの喧嘩を始める俺たちの傍らでパン♪ と、手を打ち合わせる小気味の良い音。
「でしたら♪ 今夜からでも寝室にお呼び頂ければ、旦那様のお世継ぎを産むために……その……不束者ではありますが……頑張らせて頂きたいと思います!」
力強い宣言。いや、そもそも彼女たちに関しては、この屋敷に来た時から全員、その腹は文字通り決まっていたのだろうが……。
目を輝かせて、期待に満ちた声を上げるネル。特攻に出掛ける兵隊さんの様に、引き締まった凛々しい表情を見せるデズデモーナ。
どうせ俺が何か言った所でこいつら、女共は聞く耳なんて貸さないのは分かってる。
「……俺、今日から頌の村の奴らの……狩猟小屋のどっかに……転がり込むから……探さないでね?」
* * *
「それで……? アレは何してんの?」
頌の部族の狩猟小屋に泊まって、一晩明けて――腫れは引いたにもかかわらず、なんだか痒みが残っている様な感じのする、やぶ蚊に食われた、身体のあちこちをボリボリ掻き掻き、悪魔に訊ねる。
視線の先には馬場の柵に両手で掴まって、形の良い、小さなお尻を突き出し「バチコォーホホォイィ!」と、裏返った声を上げるデズデモーナの姿。
そんな彼女に対して飛ぶ「処女膜を震わせて声を出すのじゃ!」ヴィルマの厳しい指導の声(……アホの子に見えるから……やめなさい……ヲマエら)
愉快そうな嗤いを洩らす悪魔の様子から察するに「や~っ♪ やはり思い詰めて突っ走る人間と言うのはどうして……こう……クククッ」真面目な彼女は、余程……自身を追い詰めているのかも知れない。俺の思慮に欠ける一言が、原因な訳だけれど……。
――普段は俺の言葉になんて、まともに耳を貸さないクセに……どうして、こう言うことだけは、ピンポイントで真に受け止めちゃうかな……女って生き物は……。いつも通り、スルーしろよ……。
 




