ついうっかり
扉が開かれるなり、部屋に漂い込む俺の苦手な空気。
「こ、今回の件……あ、あたし……い、いえ……私……」
実家の謀を事前に聞かされていなかったのだろうデズデモーナは、完全に被害者でしかないのだが……根の真面目な彼女は、親族のしでかした不始末を、それをそうとは考えることができないのだろう。
「言いたいことは分かるし……想像もつくけどさ」彼女の深刻な胸中を少しでも和らげたかった俺は、できるだけ軽い調子で――デズデモーナに対する処遇を伝えることにした。
「……メイドさんたちも一緒に来てくれてるってことは……お前が、彼女たちを酷い目に遭わない様にしてくれていたんだろ? それで良いよ。別に」
勢い込んで、押しかけて来た皆は、安堵の息を洩らすが――デズデモーナだけは、その采配に満足できなかった様子で「そ、それでは私の気がっ!?」と、何やら自責の念にでも駆られている御様子。
(普段は、お気楽に振る舞ってる体の子に限って……もぉ)
なんらかの処罰なりを言い渡して欲しいのか、彼女は一向に納得してくれる気配をみせてはくれなかった。どーしたもんだか……。自身の体たらくの程を知り尽くす、至らない身としては、人に上から目線で罰を与えるとか、本当に無理。
「それじゃあ……デシレアにでも頼むか。お前んちを金の詰まった袋で殴れって」詰め寄る彼女に困った俺が、冗談半分に口にすると
それに対して予想を超えるまでの反応で以って応えられていた。
「……そ、そ、それは……あ、あたしの可愛い弟……あの子が……あの子の将来……600年続いた……当家の血統……が」
(しまった。考え無しが過ぎた……調子に乗り過ぎた)




