そして、俺たちはパンツと言う尊い犠牲を払った
屋敷は散々なまでに、荒らされ放題に荒らされていたかと言うと……そうでもなかった。
こちらの世界では、高価な物とされるガラス窓や磁器などの調度類のお陰で、屋敷をできる限り荒らすこと無く、売り払おうとでも考えたのか――統制の良く取れた連中の仕事ぶりが伺えた。
被害が見られたのはせいぜいが、ネルの酒蔵に――保存食。と言った程度の物。俺が世話を続けて来た大事なチーズたちは、有栖川さんが手配してくれた、貸し冷蔵コンテナに運び入れられ、今日にでも持って来てくれる手筈になっている。
――チーズたちよ。怖い思いをさせて……ごめんよ。また、しっかり世話してやるからな……。
その他には、こまごまとしたカトラリーや、女共の下着類が少数、略奪にあっていたが、これらはトーヴェの支配下におかれたままの連中から、丁寧に丁寧に、下着類を除き、全て吐き出させた。下着類を、そのまま彼らにお持ち帰り頂くことにしたのは――そのなんだ……。
返して頂いても、元の持ち主の皆も困ることだろうし、それを略奪品とした彼らの気持ちと言うのもまぁ……。分からないでも無い。なにせ俺も男の子を長いこと続けている。武士の情け(?)と言う奴だ。痛ましいし……見てみないフリをしてあげちゃう。
ネルの下着が、よその誰かの目に曝されると言うのは抵抗が無いでは、無かったが――それらは戦利品として記念に、お持ち帰り戴くことを許すことにした。
パンツたちは……尊い犠牲になったのだ……。
「私の影たちに方々、確認させてみましたが、被害は以上のようですね。ご主人様」
部屋で報告を受けていると、扉を叩く音。
悪魔が扉を開くと、やって来たのはデズデモーナと、彼女の槍試合のチームメイトの仲間たち。それとあの時、屋敷から逃げ遅れたメイドさん数名。
(団体さんでいらしたよ……弱った……)
 




