猟奇なチーズ
「……う~ん。じゃあチーズ! チーズを作ろう。お前、作り方とか知らないか?」
妙案とばかりに挙げてみれば、──ネルは腕を組んで、渋い顔。
「……チーズ。チーズ……ねぇ? 作り方は……まぁ、知ってるけど……」
なにやら、あまり乗り気では無さそう。
「なにか問題があるのか?」
「チーズも食べると、美味しいのだけれど……。アレ……イチから全部作ると……ちょっとグロいのよ」
「グ、グロい?」ネルの口から出て来た、予想外の単語に驚いて、思わず聞き返してしまう。
「チーズを作る工程で……レンネットって、酵素が必要になるんだけれど──それを造り出すというか取り出す方法がね。……生後間もない、仔牛なんかの4番目の胃袋を塩漬けにして、滲み出た水分を用いるの……よね?」
「ほうほう?」さすがは生まれ変わる以前の俺と、つがいになっただけはある。農村での暮らしに関する知識は、しっかりと持ち合わせているらしい。素直に感心。
「……想像して想像して? 可愛い我が子に、精一杯、愛情を注ごうと思っていた矢先に、牧場で信頼していた飼い主に我が子を殺されて……。その子の胃袋を猟奇にも塩漬けして造られるレンネットで『もう……お前に子供は居ないから、その乳は無駄だよなぁ? だ~ぁかぁらぁ~せぇめて……グぇっへへへっ♬ おまえの子供の胃から取ったコイツでチーズにして、俺様たちが美味しく戴いてやんよぉ♪』って、我が子を殺した敵に、成す術もなく、おっぱいを搾られ続ける、お母さんの痛ましい姿を」
「……おぉ……おう。再現Vの悪意満点さが、ヘビーにもほどがある。俺もう、ピザとか食えないかも知れん」
とは言っても、それを言い始めたら、肉も魚も食べられなくなる訳だが……。




