穏便に、腹の虫はお察ししますが……何卒、穏便に
俺が、呆れて苦笑いを浮かべていると――「仕方が無いじゃない。メスにとって巣を脅かす輩は、すべからく敵なんだから」とネルは俺を諭すように説いて、持ち出した食料で、てきぱきと食事の用意を整える。そして口々に喚く娘っ子らの口に、それらを突っ込み、見事に黙らせにかかってみせた。
こんな状況下だと言うのに、ネルの作る食事は相も変わらず美味しかった。
* * *
――そして、夜。まだ早い時間――
トーヴェと一緒に、屋敷に戻る森を歩く。
小さな手を握って、落ち葉で足が滑る斜面を歩く。振り返ってトーヴェを見ると暗闇の中――彼女の赤い瞳が、らんらんと夜行性の肉食獣の様に森の星明りを反射して、光を帯びていた。
「……で、で、でも、に……に……に……にぃに……な、な、な……なんで……」
何故、あの時彼女を止めて、彼らの好きにさせて置いたのか? 彼女が聞きたそうなことは――きっと、こんなところだろう。
「一応、デズデモーナの家から、送られてきた人たちだしなぁ……。やって来るなり頭を『覗いて』問答無用に――成敗! なんて……できないだろ? 俺もネルも、人死にとかも嫌だし。ネルに至っては……ロキシーにだって、死なれるの絶対嫌がるし。まぁ……俺も嫌だけどさ。彼女には以前、大変な世話になってるのもあるけど……いや、世話には、毎日の様になってるのか」
何故か、俺の股間を真顔でじっと見つめるトーヴェ。おいおい、ヤメてくれよ♪ そんなジッと見つめられて、穴でも開いちゃったらどーすんだよ。
「……た、た、大変……な……な……お、お、お世話に?」(ん?)
「そ、そ、そ……総……は、排出……孔……?」
「……違うからな?」




