プロは襲撃を受けると一端、その場を放棄するって……保険屋さんが言ってた!
事前に頌の森の奥深くでレジャー・シートを広げて待機させていた、ンゴグギー率いる蛆谷のゴブリンたちと合流するや、俺とネルは、デモピレさんと、ロキシーを降ろして、きゃっきゃっ♪ わいわいと、お互いの逃げ足の早さについて賛辞を贈り合う。
「なんだよ?『あいよ!』って、老舗割烹の女将かなにかか!」ネルの名を呼んだ時に返って来た声が、おかしくて俺は笑ってしまっていた「流石は、つがいよねぇ~♪ ねぇーっ♬」それに、にこやかに相槌を返すネル。
「……お取込みの最中、悪ぃんだけどもよ……ツモイに……姐さんよ……」俺たちの間に、ぬっと割って入るウルリーカ「この後……あいつらを血祭に上げて……皆殺しにする……展開……オレらの出番が無ぇとは……まさか……言わねぇよな……」
屋敷を脱出した皆は一様に――少なからず不機嫌さと疲労感を漂わせてはいたが、オークの娘たちの殺気立ち方は、見たことも無いほどのもので、その殺気は目に見える程。
「無いんじゃないかな~? ウーラガンドも、プルトゥングも……カンプラードの教えの体術が活躍する展開も♪」
声と共に姿を現したのは――短弓の矢を、漫画の様に背中一杯に受けて、殿を務めてくれた悪魔と、花さんと小太郎。花さんと小太郎は、デシレアが創った物だと一目見て分かる、分厚い甲冑を身に纏っていた。悪魔の有様から察すると2頭に射かけられた矢は、こいつが全部防いでくれたらしい。
「ご苦労さん。相変わらず……デタラメな身体してんな、お前。なんだかヤマアラシみたいだぞ?」
俺が悪魔を労い、背中に刺さった矢をのんきに、わいわい言いつつ引き抜いてやっていると、ヴィルマが爆発し始めた。
「ツっガータぁ!! わしを……わしを……メトレス・マリアの教会に連れて行けなのじゃ! カラシニコフさんの恐ろしさを……奴らに思い知らせてくれるのじゃ!」
――どうして、こうも血の気の多い娘共ばかりなのか。




