ですよねぇ~♪
やって来る移住者たちのことについて、あれこれ俺が考えている内に、屋敷の地下に在る、こちらの世界であっても、数少ないとされるデシレア謹製の『門』を通じて、3万の移住者の内、3百人ほどずつが訪れると言うーーその日はやって来た。
終始ご機嫌な様子のアルパゴンの案内に従って、続々と門から踏み出して、屋敷の外へと続く彼らは――どこから、どう見ても全員が、職業軍人と言う身体つきの人間ばかり。
背中に背負った荷物の中には、雑に隠した短弓や、矢束に長剣をーー
「……えっ? これは生活道具一式ですが……なにか?」
とでも言いたげに、チラホラと垣間見せる。
そして、彼らはアルパゴンの案内に従って、その一部が外に続いた以外は――、日を置くことも無く、すぐさま一斉に蜂起した。
きっと、デズデモーナんちの親父さん。
ネルの力で味を占めたんだろうなぁ……。
とっ捕まえて繋いで、作物実らせまくれば、税収右肩上がりなのは間違い無い訳で、今回の……この件、手勢をこちらに送る千載一遇の機会とでも見なしたのか。
鬨の声を耳にするや
「……にぃにと、ねぇねの巣の中で……酷いことをしようとする悪い奴……ひとり……残らず……殺す……」
と殺気立って宣う、トーヴェを小脇に抱え――俺は示し合わせた息の良さで、ネルと屋敷の皆と共に逃げ出してみせていた。
逃げ遅れたのは――この件を実家に聞かされていなかったのだろう……想像が追い付かず、事情が把握できないでいたデズデモーナと、メイドさんが数人。
しかし、まぁ伯爵家令嬢が、あちらに居る以上。
メイドさんたちに対して、無体を働く輩は居ないに違いない。
 




