人盗りとか、時代劇じゃ無いんだから……勘弁
「出来る限り……あいつらと、ネルたちの力は……借りないに越したことは無いんだよ」
劇薬過ぎる彼女たちの存在に、頼れない事情を話すと、アルシェノエルは可笑しそうに小さく、花の様な笑顔。
……まぁね。今更だよね。ホントにね。
水を差したことを「失礼」と短く謝罪して、彼女は居住まいを正し、この問題に対しての彼女の見解を述べてくれた。
「古来より、領土、領民を得るための方法と言えば、私たち騎士の本分であるところの戦と相場は決まっている。……が、貴方はきっと、それを善しとはなさらないだろう」
(ええ、ハイ……できるだけ穏便にお願い致します)
「かと言って、移住者を募ると言うのは残念ではあるが、貴方が住んでいた世界とは違ってできない。領主と言うのは領民を土地に縛り付け、人頭税を始めとした税を賦課して得ねばならないものなのだ」
「俺の住んでた世界の……社会についてまで勉強してんのか?」驚いて彼女に聞くと「時間は有り余るほどある。陶片の皆から教えを受けている」模範的貴族の子女らしい言葉。いや、実際には貴族のお嬢様方が、どんな教育を受けるのかなんて、俺には知り様も無い訳だが。
「――で、なにか良い考えはあるのか?」
身を乗り出す様にして、彼女の快刀乱麻な言葉を期待した俺だったが「……残念ながら」と、そうそう巧い方法など無いと言うことを、彼女は困った様な表情で告げる。
前振りも無く、背後から伸びて来て――柔らかく俺の首に絡む白い腕。
「なに、なになぁ~に? あたしが居ない所で2人して、なに楽しそうなお話してるの?」
リュシルを心配して、部屋へと様子を見に向かったデズデモーナが戻ってきた。聞けば泣き疲れて寝ていたとのことで、ピエレットに任せてきたのだとか。




