俺、空気読めたり……読め無かったり
一瞬の気も抜けない、綱渡りの様な緊張感の中に、一人勝手に叩き落され、つまりは相も変わらずの小心者さ加減を全開にしたまま、場の空気も読まずに、一切の手心の無いゲームを展開し続け――俺は、彼女たちのお小遣いだと言う、銅貨を巻き上げ続けて見せた。
どやぁ♪。
* * *
しばらくすると俺の席の前には、銅貨が小さな山を作っていた。涙目になって悪態をつき、逃げるようにして部屋に帰って行くリュシルを見送り、次のカードが配られるのを待っていると……気が付いてみれば、みんな戦意を喪失と言うか――軽く引いていた。
「……旦那様ぁ?」デズデモーナの恨みがましい声「あたしたちの……可愛い、可愛い……リュシル泣かすまで、容赦無いって……どう言うこと? ねぇ? どう言うこと? 夕食後の楽しい団欒の場だったハズよね? ねぇ? どう言うこと?」
詰め寄るデズデモーナに返す言葉などあろう筈も無く、うつむく俺。
(……あ、あい、すいません。ほ、ほんと……すいません)。
俺と彼女のやりとりに「遊びの上の事とはいえ。勝負事に真摯に向かい合っただけのこと。騎士として見習うべきことだ」と、助け舟を出してくれたの、アルシェノエルの言葉に――デズデモーナとピエレットは、リュシルが心配だからと俺たち2人を残して、席を離れた。
「……お、おああぁ……や、やっちまったよぉぉ……」
彼女たちが立ち去った後――テーブルで頭を抱えて、呻いていた。
どーして、こう……。ひとつの事に注意を働かせると俺って……周りが見えなくなるのかな。なんかもぉ……カウンセリングでも受けに行った方が、良いんじゃないのかと、本気で心配になってくる。




