小心者なんです……ビビちゃってます
「……ほら、デズデモーナ……強制労働……」敗者が、カードのシャッフルを担当するシステムらしい。投げやり気味に返事を返し、あまり慣れた手つきとは言い難いカード捌きで、シャッフルを担当する伯爵家令嬢様。
「今度は……どうするのぉ? 今のと同じ? もう、やぁよ? なんだか……この顔ぶれで、勝てる気しないんだもの」
愚痴をこぼして、雑なシャッフルを繰り返す彼女に――1位で勝ち抜けたと言う、リュシルが提案したゲームは、陶片の相棒に教わったと言うポーカー。
(ど、どどど……どうしよう。彼女たちが……本気で俺の生活費とか……巻き上げに掛かって来るつもり……だったりしたら)
駅のゴミ箱なんかで良く見かけた、オジサン用の漫画なんかで……良くある展開とかじゃないだろうな……コレ。
最初は和気藹々としたゲームから始まって? 徐々にレートが吊り上がって、最後には俺を除く場の全員が結託して、俺から毟り取れるものを、毟り取れるだけ、毟り取る展開とかだったりしたなら……。
(有り……得るかも知れない)
なにせ、この場には……槍試合で貴族を相手に、ありとあらゆる物を情け容赦無く、平気で巻き上げて見せたデズデモーナが居る。
不吉な妄想に、カラカラに乾き始めた喉に唾を呑み込む。彼女の顔を見ると、目が合った彼女は、不思議そうな表情で少し、首を傾げて見せた。
「そうね……」ゲーム内容を決定したリュシルが、続けてレートを提示「単位は、銅貨で……1枚ずつにしましょ?」
(こ、ここから……レートが急騰したりした時には……なんとしてでも、尻尾を巻いて逃げ出さねば……)
しかし、結果から述べると、ゲームはいわゆる健康マージャンなんかを――やや、不健康にした程度の、ささやかかつ、慎ましいゲームで終始。
しかし、俺には――いつ、彼女たちが
「いやぁ~♬ 旦那様。お強いお強い♪ もしよければ……そろそろ、本腰を入れると言うことで、少し嵩む額を賭けて遊びませんか?」
などと言い出すのではと、気が気ではなく。




