お風呂遊びのおもちゃみたいに
先日の「粗相」の件は、どこへやらと言った感じで、あちらで買って来ていたらしい、ブブゼラを激し吹き鳴らし、軽薄な音を撒き散らして、囃し立てるヴィヴィ。
温泉街で、ひっそりっと暖簾を護り続けている場末のストリップ劇場か、何かの様に――まるで場に合わない、下手な口笛を吹いてくれるヴィルマ。
なんだか良く分かってはいない雰囲気で、ただ場の空気にあてられて、激賛の拍手を鳴り響かせてくれるキーラ。
――こいつら、締め殺してやりたい。
晒し者の気分を満喫させられて、荒む俺の心。キーラの――普段であれば可愛らしくすら思う、アヒルのくちばしの様な唇を、無造作に鷲掴みにして、捥いでやりたいなどと、猟奇なことを考え始めた頃、海に浮かぶデシレア謹製の超巨大戦艦、シャルンホルストの口径52センチと言う、伝えに聞く大和を超える、バカげた大筒が祝砲を上げ始めた。
祝砲に海に目を向け、凝らしてみると、砲煙たなびく艦の同級艦と思しい――やたら平べったい艦と(多分、空母と言うものなのかも知れないが……良く分からない)、その2艦を中心にして、取り巻く小型艦の群れ。
(……デシレアくん。君は、おにーちゃんに一体……何を求めているんだい?)
スケール・モデルのプラモでも並べて見せる感覚で、海にあちらの世界の近代艦隊を事も無げに揃えて見せる、彼女の所業に眩暈と恐怖を覚えつつも――俺は、この晒し台での役目を終えて、出来上がったばかりの役場に用意された一室に、逃げ込んでいた。
「お疲れ様でした♪ ご主人様」
心底、楽しそうな表情で、お茶を差し出す悪魔。
「……これで……この街で……一通り……終わりな訳……だよ……な?」
御免被りたい、この見世者役を務める事になり、閉口していた俺が確認すると悪魔は、一瞬、理解不能なモノを見る表情を浮かべた後で、――小さく吹き出していた。
「何を仰っているんですか? ご主人様♪ これからが色々と……あるんじゃないですかぁ♬」
この悪魔は……今日も今日とて、紛うことない……立派な悪魔さん。
 




