ご褒美 【Picture】
「約束の品を贈るのと合わせてお前に、新しい名前を送らせて貰おうか……」
――夕食後、日が沈んで――
ゴブリンが、活発に活動する時間帯。
昼間、魔術師の娘っ子どもが、暇潰しに魔術の手解きを行っていた「黒い汚泥」と蛆谷の皆を外に集めて、約束の贈り物を進呈。
ヴィルマが作り上げたパイプ・ウニの棘で造られた、じゃらじゃらと騒々しい首飾りに、同じく砂浜で拾い集めたというビーチ・グラス。
そして先日、量産化が成功したピエール・トネールとを、デシレアとの合作で数珠繋ぎに仕上げたブレスレット。
さたにはデシレアが創り出した、とんでもアーティファクト。
トリケラトプスの頭蓋骨をオパール化させたハッタリ感抜群の兜を被って跪く「黒い汚泥」に、俺は新しい名前をプレゼントした。
この跪かれるの……本当に苦手。
「……ンゴグギーって、お名前は……ど、どう?」
我ながら……なんなんだ? このセンスは? と疑問符が乱れ飛ぶ名前。首っ引きで、あの後――ゴブリンについてを調べて、彼らが名前の意味以上に悪魔が言った通り、音に濁点が多いことを喜ぶ傾向があることを知って、考えた名前ではあるのだが……。
……いかんせん、感性が違い過ぎて……自信は無し。
しかし彼の後ろに控える仲間のゴブリンたちと、名前を贈られて打ち震えるその様子。感じる手応えからすれば、好反応……なのか?
こういう時はネルたちの思考を読み取るという能力が、羨ましくて仕方無い。
けれどもその不安を余所に彼らの喜びようは、心の底からのモノと言いきってしまって良さそう。ホッと、ひといき。
俺は魔術師の娘っ子共が、それまで愛用していた只の木の棒を――借りて来た魔剣プルトゥングを用いて削り、ヴィルマから調達した小さなサルの頭蓋骨に、捻じくれた短い山羊のツノを組み合わせて、羽根や金属片のガラクタをあしらった……百歩譲って、粗大ゴミ以外のなんでもない、彼の背丈に合わせた杖を手渡す。




