驚異の部屋の主……褐色ロリ
「……ああ、もう」再び悪魔の溜息「なに悪魔を憐れんじゃってくれてるんですか。私たちの世界では、ブラック労働が普通なんですから。この程度のことで絆されないで下さい。ご主人様に他の悪魔がスリ寄って来たらと、考えると不安になるじゃないですか」
悪魔に心配される、この奇妙な状況。この心地を、どう表現すれば良いのやら。
「それで、ゴブリンさんへの贈り物でしたか?」悪魔は、顎をひとつ撫でながら「……禍々しいもの。ハッタリ感があるもの。チープなもの。キラキラするもの……そんな感じの物を喜ぶんじゃないですかね? なにかを贈りたいと悩まれるのでしたら、ヴィルマさんに聞いてみるのが良いと思いますよ? その辺のセンスは、抜群と思われますので。ああ、あと名前をお授けになると言うのはいかがです? 彼らの感性からすると濁点が、多い名前をお贈りになられたら、喜ぶんじゃないでしょうか?」
それだけを告げると工程のスケジュールが、数分遅れていると言う、街道整備の基礎工事――アンティグアから、運び込んで来た瓦礫の埋設作業とやらがあるとのことで、悪魔は去って行った。
* * *
ヴィルマの部屋へと向かうと、ドアを開けてくれたのは有栖川さん。
彼の主人は、雑然とした中に整頓されているのが伺える――博物館の走り、ヴンダー・カンマーそのものな部屋の中で、カーペットに座り込み、ヴィルマから渡されたプレゼントに目を丸くしていた。
「わしの故郷で『アカン』と言う貝殻で作ったストラップと、ブレスレットじゃ♪ お金が貯まるからデシレアが、これを持てば最強なのじゃ♬」
ヴィルマの力作のアクセサリーに「……か、かわいい」と翡翠色の髪を震わせる義妹。
お手製のタカラガイの小物に、愉し気な声を上げる2人。割って入るのは申し訳無かったが――俺は悪魔の助言通りに、ヴィルマに相談を持ちかける。




