人生設計を固めるギアネリ
姉の言葉を耳に妹は「そないなもんやろか……」納得しきれないと言った表情。「まあ、半分以上は、うちの勘や」妹の疑いに満ちた声に早々に――その確度についてを、正直に白状する姉。
「せやけどな……。せやから、うちは今となっては、わりと本気で旦はんに、お妾さんとして囲って貰っても、ええかな思うとる。……形は歪かも知れんけど、大事にはして貰えそうに思うしな。姉妹揃って森に棄てられた、うちにしてみれば上出来や。競争はなんや、周回遅れの感も、せんでも無いけどもな……」
(マズい……これは非常に……マズい)
気配を押し殺し続け、慌てて周囲をきょろきょろと見回す。トーヴェのお陰で、身につけた大気の流れを読む力もスイッチ・オン。辺りを窺うと――小屋の中でスコラスチカが、糸巻きを回わるに任せて何かを食べている以外に、誰の気配も無し。
スコラスチカのことだ。張り巡らした糸で周囲の様子や、人の声は把握しているに違いない。今の俺の――この様子も捉えていることだろう。あとで、言っておかなくては……。
こそこそと、そば耳を立てていたら、この手の衝撃のカミングアウトを聞かされてーーそれをいつもタイミング悪く、誰かに見つかってしまい、トラブルが複雑化。そして、俺と言う人間の株が大暴落するというのが、毎度毎度のパターンな訳だ。ここは注意深く、細心の警戒心を払いつつ――。
妹が姉の言葉に興味津々になって根掘り葉掘り、黄色い声で下世話な質問を浴びせかけている様子を背に聞きながら、俺は抜き足、差し足で――その場を離れ、逃げ帰ることにした。




