的を貫くギアネリ評
彼女はしばらく、その険しさをまるで感じさせない、眠た気な眼差しのまま、思案顔で
「いや、やっぱり……無理やろな。肺が持つ訳無いわ。やめとき」
結局、思い直したのか、改めて諭す。
――というか、それはヴィヴィが俺をどうにかできる実力があるなら、殺って良し! と言うことなのだろうか……。
そこは是非にも妹を止める方向で……どうかひとつ、何卒お願い致したいところ。
姿を見せるタイミングを計っていたら、聞き耳を立てる形になってしまう、良心咎める毎度の展開。俺の思い切りの悪さか、タイミングの悪さが、この事態を生み出すのか? それにしても想像以上に過大な評価を頂いては、いやしないか? 俺。
「……それに、旦はんに限って、あんたの粗相を言って回るとか、有り得へん思うで……」
鮮度の落ちた魚類を思わせる、穴ボコのような目を姉に向ける妹「……なんで、言いきれんねん……ねぇちゃん。自分のことやないからって、適当、言うとるやろ……」
デモピレさんのおっぱいを搾り終えて立ち上がり、姉は痛む腰を叩き叩きーー
「まあ、あんたの事と言っても……血はつながっとるとは言え、他人事と言えば、他人事や……。せやけどな? あの旦はんはな……」
彼女は、その論拠を示してみせる。
「……あの人はな。どないもならんヘタレで、大奥はんに依存せんとやっていけん、甘ったれなんや……」
(……ん? あ、あれっ? 今、俺……ディスられました?)
「――この間、南の国の天国みたいな場所で、大奥はんが旦はんを指して言うた『臆病で、痛がりで、どうしようもない腰抜け』ってのは、そうなんやろなと思うわ……。貴族の生まれや無いって話やのに……聞いた話によると、家畜を〆る場を目にしただけで、顔をしかめる言うんやで? 屋敷に転がり込んで来た、貴族の別嬪のお姫様たちにも、ようけおらん思うわ。……いや、まあ……なんや、話それた気も、せんでも無いけど……。兎も角、そないな人が――人の傷に無遠慮に触れる様な真似は、せんのやないか?」




