寝床から追い出される……なんでだよ
(つまりは突き詰めれば、ヴィヴィと俺の関係性と言うことか?)。
「ち・が・い・ま・すぅ」ネルが、その綺麗な眉をいからせる。とりあえず目の前にコイツの顔がある。ちゅーしてくれるわ「……場合じゃないでしょ」
ネルはルージュを引いた後の様に、パッパッっと唇を開いて閉じてを繰り返し、俺に荒らされた、お義理程度の薄化粧を馴染ませる。
「何度も言うけど……この屋敷は繁殖のための拠点なの」(俺は認めとらん)
「それなのにオスのアンタが、とっとと子作りしないから、こう言うことになってんでしょ。なにが関係性よ。小難しいこと考えてんじゃないわよ。繁殖回路壊れてんの?」(お前は理性が、ぶっ壊れてるけどな)「良いからさっさと行って あの子、押し倒して来なさい」
謎理論を嵐の様に振りかざしたあとで、部屋を出て行く呑んだくれ。
出て行ったと思ったら、戻って来た。
ネルは一度、閉じた部屋の扉を少しだけ開くと、顔だけを覗かせ
「……今日からアンタ。当分、寝室に入れてあげないから」
一言、寝床から閉め出すことを告げると、今度こそ立ち去って行った。
* * *
だだっ広い、玄関ホールに置かれた長椅子に寝転んでいた俺。起き上がると全身、バキバキと音を立てそうな身体を伸ばす。
ネルの手先と化したアルパゴンによって、屋敷の空いている部屋と言う部屋は、鍵が掛けられてしまったお陰で、仕方も無かったからでは……あるけれど――へっ! 野宿に比べりゃ今更、この程度。
しかし、季節は畑の収穫が終わった頃。流石に玄関で火を焚く訳にも行かず、少し寒い。一晩、ニヤニヤしながら側に控えていた悪魔に、着替えを持って来る様に言って、俺は風呂に向かうことにした。
身体を温め、強張った様に感じる全身を湯の中でほぐしていると、長湯をしてしまっていたらしい。
 




