ハード・カリキュラム
そんなもんで騙されるものか! と、頭に血が上りかけたのは一瞬。
俺の扱いは手慣れたものとネルに、あれよあれよと、ベッドに引きずり込まれ「一杯、頑張ったご褒美」とやらを賜って──翌朝には、一切の不安も、苛立ちも忘れ去ってしまう体たらく。
「……俺って、こんな単純な生き物だったのか……アホ過ぎる」
自分の単細胞っぷりに、頭が痛くなったが……。
日が昇り切っても、幸せそうに横で寝息を立てる、ネルの顔を眺めていたら……それも──どうでも良いことのように、思えていた。
* * *
ツォンカパによる武術指南は、身体の再生能力と、精神衛生を保つ上で強力に作用した、ネルの「一杯、頑張ったご褒美」という不純過ぎる動機の両輪に支えられ、なんとか これをこなし続けるまでにはなっていた。
ツォンカパによるトレーニングは、基本的には、フィジカルの強化に重点が置かれたものばかりだったが、指導された内容は広範囲に渡った。
「武具の手入れと保管方法」「投石紐の製造、弾となる石の選別、投石紐の使用法」「短剣の使い方、投擲法」「長剣の使い方」「手斧と棍棒の投げ方」「戦斧の使い方」「棍棒の使い方」「投げ槍」「長柄武器の扱い方」「盾の扱い方」「鎧の機能と扱い方に関する知識(ただしコレは、教材として適当な鎧が用意できなかったことから、座学に留まった)」「生き物の急所」「戦場における応急手当」「オークに伝わる毒(注入毒/森の毒)の製造方法」「オークに伝わる士気高揚剤(幻覚剤/勲しの夢)の製造方法」「松明の製造方法」「オークの習わしと戦場における作法」そして「オークの格闘術」に一族を守護する御神体(攻城兵器!)の作り方と、祀り方。




