おかしい
「つがいにとって、イチャイチャすること以上に大事なことなんてあんの?」
彼女につがいと言うペアを指す言葉の対象として選ばれたことは、正直嬉しくもあったし、言い知れない優越感のようなものも──あった。
──が、今はこの賢者タイムを使って。芽生えた、いくつかの疑問について 今更ながらに考えてみる。
〝彼女〟について。
(……すでに、これが一番良く分からない。ここ何日か、片時も離れず一緒に居たにもかかわらず、外見から把握できる以上のことなんて、なにも分からなかった──と、言うか。女性経験すらも無かった俺に「それ」が分かることなのか? ……と、問われたならば……どうしようも無いことなの知れなかったが……。精々、アタリメのような味の濃い、酒の肴と安い焼酎が大好き、と言うことくらいしか分からない……)
「そりゃそうでしょ? なに深刻ぶって考え込んでんのよ……。大体、アンタ。アタシとのSEXに夢中で、話なんて大してしても、いなかったじゃない」
(……今更とは言え、生々しいわ。ちったぁ恥じらいの様子とか見せろ。賢者モードをナメんな。それ以前に、勝手に人の思考を読むな。……てか、これも今更だけど、なんなんだ? この異様に鋭い、読心術めいた察しの良さわ)
「い・し・ん・で・ん・し・ん♪」
「やかましい」
(よし、無駄だ。この女のことは分からん。次っ)
〝空腹感と渇え〟について。
(いや、そんな次元の話じゃあ無いことは、バカな俺にでも分かる。今日の、日本の夏の酷暑っぷりと来たら、10代の若者をバッタバタとなぎ倒し、熱帯地方や、アフリカ、中東からの留学生を
『ナメテルト……死ヌネ』
と、いわしめるほど。
なのにネルと出会って、今日まで俺は、1度の食事もしていなければ、水分の補給すらした覚えが無い。