リスクを取る度胸も、決断力も無いんだってば
「就職じゃなくて、起業しちゃえ♬ って考えればいいんだよ。おにーちゃん♪」
まるで空を掴むような、ハードルの高いことを事も無げに言ってくれた。
「それが許されるのはね? 一流大卒のデキる奴だけなんだって。俺、自信……皆無なんだけど……」
有栖川さんの名を呼ぶ義妹。
呼ばれるや否や、14インチほどの画面サイズのタブレット……いや、これも彼女に手渡された陶片と同じ技術の産物だろうから、なんと呼べば良いのか――兎に角、その手の類のガジェットを手にした彼が側にやって来た。
「こちらを御覧下さいませ」
起動したタブレットがスライドされ、俺も何度となくお世話になった、地図が表示される「こちらが、法皇猊下に認可されました百千万憶様の領地、面積は、およそ389平方キロメートル程になります」
……ピンとこない。
かと言って、良く用いられるような、東京ドーム何個分と言う表現を口にされたとしても、行ったことも無い、東京ドーム換算なんて分からない。
「えぇ……っとねぇ? 日本で例えるなら中の上くらい広さの市の面積くらい? だよ♪」
(……想像していたより、広いの……か?)
これが普通と比べて、広いのか狭いのかは、俺には分からないが――。
「ちなみに……これって、どうやって測量してんだ?」
まさか人工衛星が、宙に浮かんでいる訳でも無いハズ……。それまでも、何度か疑問に思っていたことを、この機会にと質問。
「地磁気だよ? わたしの司る属性を生かしてね? 測量データを構築してるんだよ。陶片の通話なんかも似たような感じ。だから地下に深く潜れば潜るほど通話音声は、クリアになるの♪ あと、データの記憶なんかも、石英ガラスの内部に、多層の記録層を作成して、データの記録・再生を行う、高い記録密度の半永久的なデータの保存が可能な、データバンクが地下深くにあるよ」
(なるほど……分からん)




