なんだかんだと、俺も適当な訳で
「……えぇ~っと。それで、お屋敷にゴブリンたちがやって来たんです……か」
しまむらで買って来させた子供用デニムのハーフパンツ(780円)と、アウター(480円)に装いを変えたゴブリンたちが、屋敷の内外で、せっせせっせと……お手伝いをしているのか、邪魔をしているのか。それは良く分からなかったが……そのなにか作業に従事しているらしい様子を、玄関のホールを見下ろす階上から眺め――キーラが、アヒルのくちばしの様な唇を、もにょつかせる。
(鉄柵を嘗めるアルパカさんみたいな唇の動きだな……。ぴるぴるぴる~って、ウェーブするような……風に、なびくカーテンの裾みたいな……指で摘んで意地悪したいぞ?)
彼女の表情に、失礼極まることを考えていると、歯に物が挟まったかのような声。
「アルシェノエルさんたちと比べられると……アレなんですけど」言い澱んで――諦めの溜息「一応、私も騎士の端くれなんですよ旦那様。……一応ですけど」
自身の立場をそれとなく溢す。
彼女の両の肩に手を置いて「諦めろ♪」と一言、諭すにはまるで足りない言葉をかけていると、俺の姿を目にしたゴブリンが駆け寄ってきて、明るい表情で挨拶して立ち去って行く。
「食い物が、まともになったせいか……肌艶良くなったみたいに見えるな? どう思う?」
そんなことを聞いてみれば、彼女は取り出したハンカチで涙を拭い
「騎士に……なにを聞いてくれてるんですか」
人間に害を成す存在と、対峙することが、義務として課せられている身分の彼女に、聞くことでは無いと言いたいに違いない。
俺の彼女たちに対するスタンスも、うやむやとしたまま。しかし、彼女からしてみれば、とんでもない所に嫁いでしまったと言った所か。
「ツモーイッ!!」階下で張り上げられる顔見知りのオークの野太い声「風呂に行くぞ。付き合え!」
 




