ゴブリンず
村は数名の若いオークが番に戻っているだけで、閑散としていた。
「……ツモイ。どうした?」俺の姿を目にした、一人が話しかけて来る。
(どうした? ……じゃねぇよ。昨日の晩は、散々……追いかけまわしてくれやがって)
……と、そんな苦情のひとつも延々と聞かせてやりたい所ではあったけれど、とりあえず俺は自分の用向きを片付けることに。「ゴブリンたちに、聞きたいことがあってさ? ちょっと良いか?」
俺の用事の内容が、よほど興味の無い内容であったのか、木で組んだ粗末な牢を「好きにしろ」とでも言うかのように、顎で指す。
番に戻ろうとする、そいつを含めた若いオークたちに、屋敷で酒盛りが始まってるから、行って来いと伝えると、持ち場を離れて良いものか、仲間と考え込んでいた様子ではあったが――我が家で提供される食事に興味が抑えきれなかったらしい。村の番を俺に任せると、皆で駆け出して行く。
――さて、と。
……俺は、バカなのか。なにを……必要も無い気を使って、あいつらを酒盛りに向かわせたというのか……。
今からゴブリンたちと、お話するんですよ? 俺一人なことをつけ込まれて――ゴブリン共に襲い掛かられでもしたら……どーするって言うんだよ。
自分の考え無しの言動に……膝を折って、項垂れそうになる。
心行くまで自己嫌悪に浸ると、気を取り直し――久しぶりに、この村に足を運んだ理由を思い出して、用事を済ませることにした。
今の俺は――あの時の俺とは違うのだと……自身の能力についての根拠もなにも無い、フラグめいたことを、必死に自分に言い聞かせ、彼らが閉じ込められた牢へと向かう。
この時の俺も――どうしようもなく、どうかしていたに違いなかった。
* * *
ゴブリンたちを閉じ込めていた檻は、以前とはだいぶ様子が異なり、檻と言うよりも囲い。その中に粗末な草葺きのシェルターが設けられ、彼らは、頌の部族に対して隷属して、労役を果たしながら、日々の暮らしを送っていることが伺えた。




