一晩中、はぁはぁ……する
「どうして祭りで血が流れるんだ?!」悲鳴の様な声を上げて、先程パスされたチーズを投げ返すが、彼に向けて放ったチーズの塊は、裏拳一発、撥ね退けられる「オークだからだ」
今更、んなこと聞かされなくったって、知ってると言いたかったが、顔に歓喜を漲らせて――部族の皆は雪崩のように俺に向かって襲い掛かって来た。
「ド畜生おおぉぉおおぅっ?!」
俺は、広い平野の中心で――夜の空気に霞んで消える声を響かせると、踵を返して駆けずり回り、逃げ惑い続け、夜明け間際まで追い立てられ続けた。
* * *
追い縋る最後の一人が、走り疲れて倒れる気配を耳にすると、俺は振り向いて
生き延びた喜びによるものか、勝利の雄叫びかは、もはや頭の中はぐちゃぐちゃで――自分でも分からなかったが……逃げ切ってゴールを決めたラグビーの選手か、アメフトの選手の様に咆哮を上げていた。
「生きてるうぅぅっつ!?」
平野には死屍累々と言った感じで、皆はひっくり返り、ぜぇぜぇと荒い息を弾ませるか、俺を追いかけるのを早々に諦めた連中は、頬杖をついて寝転び、顛末を眺めて笑い声を上げていた。
この野郎共……。
こちとら……ツォンカパに地獄を見せられて、逃げ足と言うか……足腰に関しちゃ、ちょっと自信あんだよ……。お前らみたいな……筋量過多なバルキーな奴らが、長距離を……苦も無く走れると思うなよ……。
乱れたままの呼吸で、声にはできない悪態を胸の内で思う存分に吐き散らす。
とは言っても、こいつらの人類を凌駕するタフネスに対抗するには、握りしめたままの――白い明滅を繰り返すボトルが無ければ、確実に無理だっただろう。
息を整え終えると、最後まで追い縋って来た奴の頭を御褒美代わりに、ひとつはたいて、ハリバドラに祭りの終了を宣言させた。
「……御神体バラして片付けたら、村のみんな連れてウチに来い。風呂入るぞ……風呂」
 




