自業自得とか言わないで?
どの口で……と言う感じでしか無かったが、文句のひとつも言いたい所を、グッと我慢して――皆の傷をあらかた癒し終え、ボトルを手の中で弄ぶ。
チーズのひとつを手に入れたハリバドラが、包みのまま匂いを嗅いでいた。その嬉しそうな様子から察するに、どうやら胡椒入りを引き当てたらしい。
「……おめでと」
あまり祝福する気にもなれなかったが、形ばかりの祝いの言葉を――彼に。
「…………」
その言葉に、思うことでもあったのか? 顎を撫でて、なにやら思案顔を見せる族長様――。
どうしたのか様子を見守っていると彼は、俺に手に入れたチーズを投げ渡してくれた。
(縁起物だから……くれるってことか? それとも気に入らなかったから返すってか? ……だとしたら許さんぞ)
彼のこの行動の意味が分からなかった俺は、しばらく考え込む羽目になったが、その行動は――全くもって、そんな類の意味を持つものでは無かった。
「胡椒入りのチーズは! ツモイが手にしているぞおおおぉぉぉっつ!!」
「なんだと?!」
それは、キラーパスどころの話じゃあ無かったと言う。
……ああ、いや。動転してキラー・パスの使い方、間違えてら。
* * *
傷が癒えた連中が立ち上がり始める。
首を鳴らしているとは思えないほど、恐ろし気な音を響かせる奴、
拳を組んで鶏の骨を砕くかのような音を立てて指を鳴らす奴、
起き上がった皆は取る行動は、それぞれでは……あったけれど――一様に、俺に向ける視線だけは嬉し気で……。
「……ツォンカパの秘蔵の弟子……相手をしてみたかったぞ」
「流石は、ハリバドラ。粋な真似をする……」
「ええ……っと、皆さん? ちょ……ちょっと……み、皆さん?」
にじり寄る様に、歩を進めて来る彼らの迫力に後ずさる。
これを計ってくれた若き族長さまに、ちらりと視線を向けると、笑みをひとつ浮かべて
「祭りなのだろう? 血のひとつも流さねば」
まるで一緒に神輿でも担いで良い汗かこうぜ♪ みたいなノリで、そら恐ろしいことを言い放つ。




