食べ物で、遊んではいけません
「どちらでも無くてだな……それは神の力で、ぽい~ん♪ って感じで出現したんだと言われている」
「……なるほど」
「で、そのイーサーは……だ。取り出したチーズを……これまた神の力で、遠くにブン投げて、その戦士たちにチーズを持ち帰った者に、自らの力を分け与えると言ったのだそうだ」
「おお……」
「この勝負の行方は、残念なことに伝わっていないんだが……けどな? それを元にするという祭りは、伝わっていてだな?」
そこまで話すと俺は、ウルリーカに言われて用意してきた、デモピレさんのおっぱいで作ったチーズのいくつかを、放り出したまま置いておいた包みから取り出して――
「こいつをお前たちの御神体ほどじゃあ無いけれど……もっと、ささやかぁ~な御神体で撃ち出してだ? それを取りに走るって言うな?」
「そ、それは……。そのチーズを手にしたものは、神の力を手に入れることができると、言うことか?」
「いや、残念だけど……。まぁ、そういう由来の祭が俺の故郷にはあるって話だ。折角、チーズもここにある。験を担ぐのに一丁……どうだ?」
「……いいのか? その大きさのチーズを造るには……何頭も潰したのでは無いのか?」
「構わん! こんなスンバらしい祭に招いてくれた礼だ。本当は、皆で酒盛りの肴にするつもりで持って来たが、ケチなことは云わん!」
顔を見合わせて囁き合うオークたち。
口からデマカセ以外のなにものでも無かったが、俺は――遊び足りなかったのだ。
そして、こいつ等なら「強力な戦士を」と言うフレーズに食いついてくれるのも分かっていた。
「ちなみにだ……このチーズのひとつには粒のままの胡椒を大量に混ぜ込んだ奴もある。どうだ? 全部で6つあるチーズ、それぞれ手に入れた奴の物ってのは」
ダメ押しの一言の――つもり。
「……面白い」
あちこちから、上がり始める参加表明。
ちらりと、ハリバドラの顔を窺うと――彼も口の端から犬歯を覗かせて、この提案に乗ってくれた。
 




