淡白すぎる奴ら
腕木の弾受けに石弾がセットされると、弾を運んだオークたちが慌てて、こちらへ小走りで駆けて来る。よほど発射時に危険が伴うのだろう。
準備が全て整い、ツォンカパに新たに族長に指名された、まだ若いオークが皆を見回し、頌の部族の御神体、ガウラフ・ミルデュラの発射の号令を、星が煌き始めた空に向かって高らかに宣言した。
* * *
固定されていた綱が解き放たれ、ゴンドラ部分が高速で落下するエネルギーで、腕木の弾受けにセットされた石弾が、勢い良く発射され――放物線を描いて、夜空に消える。
発射の反動に揺れる巨大な木造建築物が、静まるより早く
一拍二拍ほどを置いて、遠くから石弾が――地面に激突する際に発する、凄まじい音が聞こえてきた。
歓声を上げる者、吠える者、御機嫌に鼻を鳴らす者と、皆、それぞれではあったが――なんて勇壮な、お祭りなことか。
俺は、この場の空気に当てられていたこともあって、周りの奴ら相手に、この場に呼んでくれた感謝を誰彼、構わずに口にしていた。
なんか、もう和気藹々。
さて、次は――と思った、ところだった。
上機嫌にグロウルの利いた笑い声を上げるや皆は、テキパキと帰り支度を始め出す。
「……えっ?」
どうやら彼らの……このお祭りは、これで御終いらしかった。
「ちょ! ちょちょちょ! ちょおっと待てい!」張り上げた俺の声に皆が振り向く「……え? なに? お前ら……まさか、これで御終い……なのか?」
1発発射して……あとは、みんなで酒盛りして御披楽喜? え? マジで?。
「どうした? なにか気に入らんことでもあるのか? ツモイ」オークのひとりが訝しむ「いや、気に入る……気に入らないの話じゃなくてよ? 折角、こんな凄ぇ物……組み立てといて1発射って、それでお終いって……寂しくね?」
 




