人に優しく!
腕を組んで次の拷問メニューを、即興とひらめきという名の思いつきで、考案しておられる真っ最中。
実にそっけなく、希望ひとつ無くなることを平然と言ってのける。
「あ、あの……すみませんが……人間の俺には、いきなり……この量は死……んじゃい……ますんで……も、もーちょっと……」
「鍛錬の密度……こそ増やせと?」
「……違うから……ホント……違いますから。オーク基準で、考えないで……お願いしますから……」
「……確かに。ネズミ捕りの猫を、軍馬に仕立てようとしても埒外なことだな」
「そ、そうです! そうです!」
『人間の俺を軍馬に訓練を施すノリで、鍛えようとするんじゃねぇ!』と食って掛かりたいところではあったけれども。
おっかないオークさんを刺激する度胸は無かったし、なにより既に、その気力も失っていた俺は、トレーニング内容を楽な方に、楽な方に誘導すべく必死に知恵を絞る。
「だが、そうなると……次の鍛錬はどうしたものか……」
(お願いです。お願いですから、もう、お家に帰して……)
「あ、あの……ツォンカパ? 戦うための鍛錬なんですから……型なんて、教えて貰えないんでしょうかね?」
ナイス俺。内心、自分の思い付きに拍手喝采。
これだったら、物覚えが悪いフリをし続けさえすれば──きっと多少は、楽ができるに違いない。
「……? 型? なんだ? それは?」
ーーが、初めて耳にした単語だと云わんばかりの表情で、聞き返されるとは思いもよらなかった。
「え? あ~。えぇっと……。ほら? 相手が、こう攻撃して来た場合ぃ……こう受けて、こう反撃する……みたいな? 学習過程で教えて貰う、セオリー的なアレですよ」
正直なところ、俺自身──。




