のしイカみたいに
突然、背中を踏まれる形で押さえつけられる。
プレス機にでも、かけられたかのように──抵抗も、反発も一切できない。肺の中の空気も、一気に押し出され、息もできなかった。
「まずは柔軟からだ。息は止めるな。柔軟に良くない。ゆっくりと長く深い息をしろ」
両手足を縛って錘をつけた上で泳げ、と仰るほどの御無体ぶり。
(……そ、その……い、息……が、できない……んで……すが……ああぁ……)
こんな過剰なトレーニングが、身体にとってプラスになるハズはなかった。案の定、体中の筋と言う筋は、ぶちぶちと悲鳴を上げ続ける。
しかし、花さんに頭を壊されても、すぐに復元してしまうほどの、再生能力を発揮する この身体は悲しいかな……。
そんな程度では、問題にすら成り得ない。
(……た、頼む……ふ、不具合をプ、プリーズ……俺の身体……)
ありもしないカスタマーサービスに訴えたが、意味も無し。
「……そろそろ飽きたな」(飽きた?! 待って! ちょ! ツォンカパ!? い、今飽きたとか言わなかったか?!)
「次の柔軟はこれにしよう」
(#@%☆&Σ β ‰ーーーーーーーーーー!?)
ツォンカパの思いつきに基づく──果たして、どれほどの合理性が存在するのか、甚だ疑問なストレッチは……この後2時間近く、入念……と言うよりは、執拗に繰り返された。
――2時間後――
ツォンカパの思いつきエクササイズのストレッチにより──体の骨は、どこに行ったのか分からなくなるほど。立ち上がろうにも、身体は支えを失ったように、木立にしがみついてヨロヨロと立つのが、精一杯の有様。
「よし。次は……。丸太を担がせて……走らせるとしよう」
「ツ……ォン……カパ……さん」
這う這うの体で必死に助命を嘆願。
「『さん』など、要らんと言ったハズだ。どうした? ツモイよ? 鍛錬は始まったばかりだぞ?」




