どーしたのかなぁ?
「……あ~、腹時計からすれば、じきに昼飯って感じか。俺は……揚げ物みたいな、コッテリしたものが食いたいわ」
「……わ、わた、わた……わたし……ふ……ふな……ふなず……し……そ、そ、そ……それ……と……か、カブト……む、虫……が……いい」(お……おい?)
俺たち2人の食べたい物が挙げられた所で、城で食事の支度をしてくれると言う悪魔の言葉を遮るようにして、何故かシドロモドロとして――デシレアは、大急ぎで話を畳み、逃げ去りたいと言った空気を振り撒いていた。
「お、おーけー! 分かったわ! トーヴェちゃんの大好きな食べ物も、直ぐに有栖川に用意させるから! 有栖川、小さい頃は虫取りチャンピオンだったって言ってたし(なにそれ?)、頼めば直ぐだよ! きっと! 帰ろ?! 急いで帰ろ!?」
(……………………)
まるで予防注射を嫌がって動物病院から逃げ出そうとするワンコか、ニャンコのような慌てぶりで、帰ろう帰ろうと必死に急かし立てる。
なにかをやらかして来たのは……間違いない……が。
彼女たちと違って、こちらには思考を読み取るなんて便利な能力も無い。まがりなりにも、その能力を持ち合わせているアルパゴンにしても、彼女たちの思考を読み取ると言うのは、出来ない芸当であるらしい。
しがない人間の俺は、彼女の目を覗き込んで、なにをしでかして来たのかを窺い察することになる訳だが……
キョドりにキョドる、透明なグリーンの瞳を覗き込もうとした瞬間――デシレアは、ふいっ! と……顔をそむけてみせた。
「閣下ぁ!?」
砂煙を上げて、城の方角から古めかしいバイク。
後日、知った車名ではあるけれど、ツェンダップとか言うらしい……バイクに跨って、こちらに向かって来るアルパゴンの手下たち。
「どうしました。騒々しい……。何度も言いますが、閣下はヤメなさい。閣下は……」
辟易すると言った風情で溜息を吐き出すアルパゴン。やって来た悪魔たちから姿を隠す様に、俺の影に隠れようとしがみつくデシレア。
(でも……おにーちゃん、ちょっと嬉しいぞ?)
 




