当たらないじゃ~ん
「……ご主人様ぁ?」間延びした声「もっと……近づけます?」
銃口から吹き出したガン・スモークが晴れると――いつも以上の酷い成果が目に飛び込んで来た。
「ちょ、ちょちょ……おぉぉっと待ってくれ!? アルパゴン! 今、やり直すから!」
慌てて2丁を左手にまとめ、銃を折って排莢し、スピードローダーを押し込む。銃を戻すと1丁ずつを、それぞれの手に持ち、狙いをつけ直して、再度の射撃。やはり相変わらずの酷い有様……。
(え……? えっ? えぇ……)
内心の動揺を押さえつつも、銃を折り弾を込め直す。準備運動代わりに指定した、18メートルで外したショックは大きい。こと射撃におけるホーム・グラウンドとも言えるこの場所で、目も当てられない成績。良くは分からないが、なんとなく感じる違和感が、原因であることは――理解できていた。けれども、それが何かは分からない。
「……に、に、に……にぃ……にぃ……にぃに……にぃ……に」
いつの間に居たのか――と言うか、足元に転がって来たのが、タンブル・ウィードだと思っていたら、自身の髪で身体を隠したトーヴェ。違和感無さ過ぎて……これ、もうなんて言ったら良いのか……。
「……トーヴェ? おねえちゃんに呼ばれたのか? デシレアはどうした?」
「ね……ね……ねぇね……い、いそがし……いそがしい……そ、それよりも」
トーヴェはゆっくり立ち上がると、長過ぎる髪の毛を歌舞伎の演目のワンシーンの様に振り回して、適当な長さに調節すると(この時点で、彼女に生物としての常識が期待できないことは良く理解できた)、この場に居ない姉に代わって、俺にレクチャーしてくれた。
「……に、にぃに……う、撃つ前に……対象を……い、いしき……いしきする……そ、そう……すれ……ば……ど、どれだけ離れていても……にぃにに……空気の……流れ……流れが……教えてくれる……必ず……当た……わか……わ……分かる……」
 




