聞かなきゃ良かった……
「なぁ……アルパゴン」俺が声をかけると、先を歩いていた悪魔が、くるりと振り向いて、嬉しそうに「なんですか? ご主人様♪」
「……あの航空機とか。軍艦? 良くは知らんのだけれど……この世界に凄くミスマッチなアレ。なんなんだ? お前の手下も、なんか軍服みたいなの着てるし、要するにココって魔界なんだろ? なんか違わなくね?」
今更と言えば今更。それまで聞こう聞こうと思いつつも、聞きそびれていたことを、思い出して――まとめて悪魔にぶつけてみる。
「……?」こちらを見て、不思議そうな表情を見せるアルパゴン「……あぁ、失礼を致しました。……つまり、この私の領土が、ご主人様が想像なされる、魔族が住む土地のイメージと……あまりにも乖離していたがために? その理由をお訊ねになられているのですね? どーして、ご主人様のイメージ通りの世界では無いのかと」
そんな傲慢なこと考えてもいなければ、言ってもいねぇと否定しようとしたところ、悪魔は「冗談ですよ。じょーだん♬」……とパタパタと手で扇いで見せた。
「『アレら』はですね? お察しの通り、ご主人様の世界の過去の大戦で使用されたモノです。居たんですよ。戦争を起こしたは良いけど、旗色が悪くなった瞬間に、私たちに祈った、おバカな人間たちが」(……えっ? ちょっと)
俺の胸をよぎった嫌な影。それを見逃すことも無く、嬉しそうに顔を近づけ語り始める悪魔「噂話なんかで聞いたこと無いですか? オカルトにのめり込み、戦火で首都を火の海に焼べ、水没した地下道に自国の国民、老若男女を放り込み、最後はヴァルプルギスの夜に『もうダメぽ』と拳銃自殺した……」
「……す、すまん。アルパゴン……そ、それ以上は……それ以上は聞きたくない」あまりに恐ろしい話を聞かされ、慌てて悪魔の説明から耳を塞ぐ。
「遠慮なさらないで下さいよ♪ ご主人様♬ ……まあ、そんな訳で ですね? トゥーレ協k……」なおも意地悪く、話を続けようとする悪魔の声を阻む様に、あーあーあーと俺は声を張り上げ、階段を駆け上がる。
「……おにーちゃんとアルパゴンって、なんだか凄く仲良しさんに見える……かも」
 




