やる気の無い大公さま
彼らを前に、あまり面白く無さそうな表情の――我が家の執事モドキ。
「閣下はヤメなさい閣下は……。私、自分の生まれなんてものに興味無いんです。この土地は貴方たちで好きに回して行きなさいってば……。これでも私、執事として毎日、ご主人様のお世話で忙しいんです。悪魔なんですから、これ幸いにと、私に痛い目を見せるくらいの悪どいことをですね? やってみせて、私に『うあーしまったぁー』って言わせてみせなさいってば……」
「その様な訳には……」
畏れ多いと言うかの様に、顔を伏せる臣下の悪魔たち。アルパゴンが、こんなに居心地悪そうに……魔界って凄い。
まるで噛み合う様子を見せない臣下の悪魔に、白旗をあげるアルパゴン。俺の射撃練習のための支度を整える様に伝えると、支度が整うまでの間、城の中へと案内してくれた。
* * *
「…………」
きょろきょろと翡翠の髪を揺らして、城内の建築様式にチェックを入れるデシレア。
「なかなか興味深いかも……」
「そうですか? つまんない所だと思いますけど……う~ん。どうなんでしょうね」
首を傾げて考え込む悪魔。
地元は見飽きて、見所を感じないと言った類の感覚でしか無いのかも知れないが、この城の規模には圧倒されるばかりだった。
俺が生まれ暮らした現世のどこを探せば、こんなデカさの城が存在すると言うのか。そして壁に柱に天井と問わずに、装飾で埋め尽くされた絢爛さ。
外と隔てる物が無い、城の階段を昇る途中、響いてくる轟音。
音に目をやれば、アルファベットのwを思わせる形状の翼に――武骨でがっしりしたシルエットの古めかしい軍用機が空を舞っていた。
その大戦時の航空機を目で追うと、今度は純白に塗られた美しいシャープな艦影の軍艦に、同じく古めかしい空母、潜水艦数隻、やたら近代的な――と言うか、どう見ても現世の豪華客船にしか見えない船などが、停泊している港の様子が、目に飛び込んで来る




