こいつが本当に魔界の大公だと言う事実
砂漠の片隅に湧いたオアシスに拡がる、中世ヨーロッパを思わせる街並みの城下町を抱える大きな城――これが、あの悪魔の住まい。
数十年もの間。こちらで腕を磨き続けた訳だが――結局、俺の「立って半畳、寝て一畳」で済ませてしまう様な、みみっちぃライフスタイルが変わることは無く。この土地以外に出向いたことも無いために、他がどのようになっているのかと言うことについては、未だ以て知り得もしない訳だった……。
その様な理由から――俺にとっての魔界のイメージは、この土地のイメージで、かっちりと固定されてしまっていた感もある。
「ご主人様ぁ?」俺とデシレアに続いてついて来た悪魔が、城の中庭に置かれた石のモニュメントの前に姿を見せる「お嬢様がついておられるとは言っても、あまり安全とは言い難い土地なんですよ? バイオレンスジャックと、北斗の拳と、フォールアウトの世界を掛けて3で割ったみたいな世界なんですから。この城に来られる際には、あれほど私に一声かけて下さいとですね……」
この悪魔まで小言を口にする様になりやがった。……俺って、そこまでダメな奴なのか?。
「てか、なんでお前……北斗の拳とか口から出て来るんだよ? 俺ですら、リアルタイムで知ってる世代じゃないんだぞ?」
1000年以上も、ひとり引き籠っていたくせに、いつ、どこで、そんな知識を身につけたと言うのか。
「驚くようなことですか?」邪な笑みを浮かべる悪魔「私のライフワーク……まあ生きてはいないと言われれば、それまでですが。まぁ? 手慰みの劇創作の養分となりそうなものであれば、節操無く吸収しますとも。方法なんて私に限れば……ねぇ?」
「閣下?!」わらわらと現れて、アルパゴンの元、跪いて臣下の礼を取る、軍服めいたコートを身に着けた悪魔たち。その姿は、人間のそれとなんら違いは無かった。なんでも彼らの間では、手に入れた人間の魂を加工して作り出す「人の皮」を被って成りすます文化が、根付いているのだとか。




