会話飛翔
貝殻を、どのようにベッドに加工するのかは、ちょっとイメージに苦しむが、開口部を上にして、赤ちゃんの乳母車の日差し除けのボンネットに見立てたものを妄想。
オパール化されたオウムガイの殻で作ったベッドに、潜り込むデシレアを想像した俺は、その可愛らしさに密かに身悶える――間仕切りが並ぶ殻の構造上、まあ無理か……。有り得るとしたら、殻を横倒しにして中に進んで、奥に寝床を置く形のカプセル・ホテル的なものが無難なのか。
……一気に想像が、みすぼらしくなった。
もやもやと湧き上がり続ける妄想を振り払う……。その貝殻も、こうして扉の装飾に用いられてしまい、それは夢物語になってしまった訳だが。
両腕を組み、自身の仕事に胸を張るデシレア――彼女たちの人の姿が、姉妹の生まれた順番通りの見た目で無いことは、頭では理解しているつもりではあるものの、彼女がトーヴェや、オーサの姉だと言う事実に、未だ以て、拭いきれない違和感が湧く……。
キッ! っと振り向いて、この姉妹共通の不機嫌な折に見せる、むくれっ面が向けられる。
「おにーちゃん……ヴィルマが言ってたけど、女の子を女の子扱いしないで、お子様扱いするのって、わたしもどうかと思うよ?」
(頭の中で考えちゃうことすらもダメ……?)
俺の不甲斐なさに、積もり積もったことでもあるのか(あるんだろうな……)、お説教が始まりそうな空気。彼女のお小言をどうやり過ごそうかと考え、日課の射撃のトレーニングをダシにでもと考えた所――。
当然、それは彼女に読み取られてしまった訳だったが……
デシレアは、なにかを考える様に数度、頷いて「……そっか、そう言えば……そうだよね」彼女たちとの会話を行う上で、度々、困惑させられるコミュニケーションのショート・カット。何に対して納得を示しているのか説明を待っていると――あっけらかんとした様子で「おにーちゃんの射撃の練習は、もう必要無いっぽい?」(ぽい?)
「……デシレア? 話が飛び過ぎて、意味が分からんのだけど」
 




