コミュ力底辺のブルース 【Picture】
先日までのこの地……と言うか、領域を襲った雷雨。これがトーヴェのもたらしたものと分かるや、ヴィルマの行動は早かった。
偶然に由らないピエール・トネールの生産。
一体全体、それが実際に何に役立つのかは、俺には分からなかったが――兎に角ヴィルマは、トーヴェを抱き込んでの生産体制を確立し、頌の部族の村の採石場から運ばせた、石を次々と稲妻に打たせて大量生産を開始。
「アルパゴン~? 次じゃ。次の石を置くのじゃ」
外に持ち出した椅子に腰掛け、超大作のメガホンを取る巨匠の風情でもって、悪魔を顎で使う褐色ロリ。トーヴェが落とす雷に合わせて悲鳴を上げ続けるネリッサ。頼まれてもいないのに彼女の豆腐メンタルを鍛えようと、フォーメーションを組んで逃亡を阻む、暇を持て余す魔術師共。
騒がしい外の様子を耳にして、俺はチーズの世話を続け、昼を大きくまわった頃に作業を終えると小屋を出た。落雷が聞こえなくなったところをみると、外で行われていた何かも終わったのだろう。
「……に……に……にぃ……にぃに……にぃに……」
いつの間にか傍らには、トーヴェが立っていた。恐ろしく稀薄な存在感。しかし謎の怪奇現象であれば兎も角、義妹であると、分かりさえすれば怯える理由も無い。
「どうした?」
彼女はいつもの吃音を、しどろもどろとさせ――頬を朱に染めて、恥ずかし気に目を固く閉ざして黙り込む。
……本気で、この子とのコミュニケーションの構築をどうすれば良いのか分からない。
まんじりともせず、彼女からの言葉を待っていると会話は、そこで終了。(…………)
その場に彼女を残して、俺は再び小屋に戻ると――以前、花さんと小太郎に味見用にカットして、そのまま放置したままだった、ネルのおっぱいで造ったチーズの切れっ端を手に、彼女の元に戻った。
 




