ようこそ♪ フィットネス・クラブ……地獄へ
「……良いんじゃない? 行ってくれば? 鍛えて貰えるんでしょ?」
量販店で購入した夫婦湯呑で、ティー・パックの紅茶を啜ってネルは、のほほんと。
「アホ! 鍛えて貰うはまだしも、その後に待ってるのは、一方的な惨殺劇なんだぞ?!」
苛立った声をあげたものの──険悪になりそうな場の空気に堪らず、荒げた声を引っ込める。
「……ま、でも。この場所には……お前が許した奴以外は来れないってお話だし、引き篭っていれば良いのか。ツォンカパ、老齢で長くないって言ってたし」
「ずずっ……。う~ん。どう……なのかしらねぇ。それ」なにやら少し考えるように、お茶を啜って、天井を見上げての物思い顔。
「格好悪いのは重々承知! でも痛い思いしたくないから、仕方無いだろう……」
「そうじゃなくて……」
「何か……気になることでもあるのか?」
「いえね? オークさんって……一度、盛り上がっちゃうと、歯止めが利かなくなる種なのね? 話を聞いてくれないと言うか、単純と言うか……暴走する猪さんみたいと言うか……」
「お~! さっき、身を以て知ったわ。マジで話を聞いてくれやしねぇ」
「アンタが痛い思いするのは、つがいのアタシも嫌だし……引き篭るのは、別に良いんだけど……」
「……? なんだよ?」
歯に物が挟まったように言い澱む様子が、気に掛かる。
「これは最悪の場合のこと……ね?」
「……?」
「……そのツォンカパさん。アンタが、トレーニングに顔を出さなかったりしたら、この辺りの森一帯を、部族の皆さんの協力で、シラミ潰しに探して貰ったりして、それでも見つからない場合、アンタを追い立てるために、森を焼き払ったりはしない……かなぁ? ってね」
「……ま、まさかぁ」
ネルの考えを耳にするなり、身体が震える。




