寝顔の方も、すこぶる厳しい
「あ~あ。子供って言っても、メスの群れって……怒らせると超怖いのに」
「……なんでだよ。どーしてだよ。あの子が、今日ウチに来るって。……前もってお前は、なんで教えておいてくれないんだよ。……俺もメルトゥイユもだな? ああ、もぉう……」
俺のその言葉に、バツの悪そうな表情――
そして目を泳がせるとネルは
「ヴィルマの故郷で買い込んで来た……お酒、呑んでたら……忘れちゃって」
……いつも通りの理由を聞かせてくれた。
* * *
「きりきりきり……きしっ! ききゅっ! きりっ……きりりっ」
――その日の夜――
屋敷に滞在することになったトーヴェが、久しぶりにネルと眠りたいと、枕を抱えて寝室に。
ならば姉妹水入らずでと、俺は気を利かせたつもりで、別の部屋にベッドの準備させ、一人床に就こうとした訳だったが、トーヴェに俺も一緒にと、ためらうように袖を引かれ――その夜、3人で眠ることに。
そして夜半、眠る義妹の口から轟く歯軋りに目覚め、ネルに抱かれる彼女の寝顔を拝見。
(なんで……目ぇ半分、開きっ放しなのキミ?)
瞼がぴくぴくと震え――なんだか死にかけのヒヨコの瞼を思わせる不吉さ。さらにはその下で眼球が、ぎょろぎょろと動き回っている様子が観察できた。
何も知らずに目にすれば――どれだけの人が声を上げずに居られるだろうか。日中、彼女に追い立てられて屋敷の中を走り回ったことを思い出す。
(なんで、あんな……、髪に埋もれて妖怪じみた格好で、つきまとってくれたかな……)
そのことについて――眠りにつくまでのひと時に彼女に訊ねてみると、返って来た言葉は「知らない人たちが、沢山居て恐ろしかった」と、言うもの。
ああ、そうなんだ。……という、返ししか思い付かない。
 




