チビっ子、激おこ
そして酷い、しゃがれた声の引き笑い。――ネルに視線を向ける。
「……なによ? 可愛いアタシの妹に文句でもあるの?」
綺麗な眉を吊り上げる、ネルの言葉に対する俺の返事は――部屋の娘っ子どもの非難を集めるのに充分な、思慮に欠けるものであったらしい。
思わず口を吐いてしまったんだよ……。仕方無いじゃないか……迫る彼女の怪談ムーヴ。……本当に怖かったんだってばよ。
「正直に……申し上げますと……ええ、ハイ。一言……二言」
今まで顔を合わせた、ネルの姉妹たちの――方向性こそは違えど、女性としての頂点に位置するかのような、整い尽したイデア。その美しさの傾向からすると……彼女の容貌は、そこから……あまりにかけ離れ過ぎていた。
――と申しますか。
……俺は危うく、この子を撃つところだったんですが? 俺……この子に組み伏せられて、目ん玉嘗め回されたんですヨ? 右から見ても、左から見てもこの子。
ホラー漫画で、劇画タッチで描かれる類の……登場人物のソレですよね?。
「……危うく、喰われるかと」
「信じられんのじゃ?!」
「女の子に最低っ!? せめて、そこは色々と繕いなさい!!」
「おにーちゃん?! トーヴェちゃんに謝りなさい!! 謝って!!」
「……わたし、だったら……きっと……泣い……ちゃう……」
そして轟々と吹き荒れる高音域の非難の嵐。
しかし、その嵐は遍く天空を司ると聞いていた「彼女」によって、直ちに宥められた。
別にイイ。私のイデアは見た目が、こうだから仕方が無い。私は、また義兄様と会うことが、できたからそれだけで満足だ。責めないであげて欲しい。
……との彼女の言葉によって。
「アルパゴン。メルの奴めを……わしの お部屋に運ぶのじゃ」
ひとまず腹の虫を納めてくれた様子の(?)チビっ子たちは――トーヴェの手を引くと、俺とネルを残して居間を出て行った。
 




