だから最初から、そう言ってるでしょ
そ、そんなハズは?! 俺が声を上げようとしたところで彼女は、なにかを察したかのような――訳知り顔を浮かべる。
「さては、この嵐で退屈なものだから……お屋敷の皆さんをつまみ食いして回っているんですね~?」
ちょっと待って! と言いたい所ではあったけれど。
歯の根も噛み合わない、今の俺には……まともに反論できるだけの、頭と舌の回転など……望めようハズも無く。
ガチガチと歯を鳴らし、この屋敷で1~2位を争う耳年増の、卑猥な単語が並べ連ねられる話を聞かされることに(ち、ちが……あれは……ほ、ほ、本当に……)
彼女の卑猥トーク・ショーが止む。
「…………」震えに震えて見上げる俺の視線と彼女の視線が交差「……ツモイさん。……本当に、何かに追われていたんですね?」
だから、さっきからそう説明している! そう彼女に訴えたかったが、噛み合わない歯の根。しかし、彼女は――それでも、それなりの状況を俺の目を覗き込んだだけで察してくれた。
「『俺、ネルが居れば良いから~』とか言いつつ、いつもなんだかんだで屋敷に女性を次々囲い込んで、嘗め回す視線で眺めて、しかも女性側からすり寄られるのを、ひたすら待ち続ける受け身系のツモイさんのことです。この部屋に来た理由も私に唾をつけて、あわよくば――と、考えて来たのかもとも思いましたが……私が得意とする桃色説法の間も、まるで興味も示さず震え続ける……。只事ではありません」
この屋敷の人間の俺に対するイメージは、そこまで地に堕ちたものなのか? と、いつもの精神状態であれば、ぐいぐい問い詰めるべきところ――。
「……でも」再び考え込む彼女「アレクサンドラ様も仰っておられましたが……このネルさんの『領域』。アレクサンドラ様は、特別に出入り可能な様に、お許しを戴いている御様子ですが……。それ以外は、他の神ですらも入り込めないと、お聞きしましたよ? そんな中……化け物なんて、入り込めるものでしょうか?」




