ちょ、ちょっと?!
「い……いやいや……。それに俺って、見て頂くと分かると思うんですけど。もののぐなんて、使える身体してませんし? 使い方も解りませんし?」
「……教えれば、良しと言うことか? お、教えよう! 貴様が、もののぐを使いこなせるように鍛え上げもしよう! ……そうか、そうだな。その通りだ。闘う相手が居ないのであれば……自ら、育て上げれば良かったのだ。闘犬を見出し、育てるが如くに」
さっきまでとは、打って変わってツォンカパの目に、力が戻っていく。
「……あの? ちょっと?」
「そうであった……」
「そ、そ、そうです。そうです! 勝手に盛り上がられても困っ……」
あらぬ方向に、話が進み始めたかに思えた矢先。ツォンカパが、ハッと冷静さを取り戻したように見えた。
(一気にクールダウンして頂けるよう、話の向きを俺にではなく「解決できない問題」であると、誘導し直さなくては……)
そう思い──必死に、このオークに諦めさせる方法を考える(いよぉ~っし! 某議員の号泣会見ばりに泣き喚いて……そこからウンコだ! ウンコまで漏らしちゃおう! 流石に、そこまでやれば強者云々の資格なs……)
「我らの言葉を解する人間よ。名をまだ聞いていなかった。無礼をした。赦せ……」
「あ、はぁ~い♪ 百千万億 春夏秋冬と申しますぅ。やだなぁ~もぉ♬ それで、ですけどね?」
「……長いな。発音も難しい。スマンが、ツモイと呼ばせて貰うが良いか?」
「どぞどぞどぞ~。ところでツォンカパさん? ちょっとですn」
「鍛錬は、明日より始めるとしよう。夕刻前、この場にて待つ。今日は、もう戻り休め」
「……あの? ちょっと? 待っ……て?」
初めて出会った日と同じようにツォンカパは、俺をひとり森に残して、話も聞かずに立ち去っていった──。




