心臓が止まりそうになるほどの……イイ声
正座なんて、なんの意味も為さない この人に――時間を取られるのもバカバカしいことを理解した俺は……デシレアと彼を探して、屋敷をうろつきまわっていた事を思い出すと、着いて来て貰って、玄関ホールへ向かった。
* * *
相変わらずの空模様。雷が光るたびに、腕にしがみつくネリッサが、身体を強張らせて、しがみついてくる「こ、こ、こ……」恐怖で舌も回らないらしい――。
「ここは……いつも、こんな……なんですか? いやあぁうっ!?」
彼女の言葉が終わる前に、わりと近くに雷が落ちた。少し間を置いて、彼女にーー
この領域で体験したことも無い、この天気についてを伝える。
すべてがアイツに都合良くできたこの場所では、雨ひとつを取ってみても――普段は庭木か、花壇の花に、ジョウロかホースで水撒きをするようなノリで、雨は降り注ぐと言うのに……。もっとも、その降らせる『雨』に関しては、義姉の力のお陰らしいが。
そうこうしている内に、玄関ホールに到着。
「それで……お嬢様か、わたくしに見せたかったものとはなんでしょうか?」
彼の疑問符は当然のもの。やって来たホールには、俺が見せたかった「アレ」が、影も形も無くなっていた。
「……え? あ、あれっ?」
ひょっとして、誰かが片付けたのか?。考え込んでいると、丁度良い所にメイドさんが一人やって来た。
「……あの?」
俺が声をかけると、驚いた表情で畏まる彼女。
「だ、旦那様! な、なんで御座いましょうか?!」
いや……えっ? ……そんなに、おっかないの? 俺って?
彼女の反応に少し傷つきつつ
「ココ……今日、お掃除とかしてくれたのは誰?」
そんな風に聞いてみただけだと言うのに、彼女は顔を青くして
「わ……わたしで御座います。な、なにか至らない点でも御座いましたでしょうか……」
怯えに怯えた声で彼女は、俺の質問に答えてくれた。悲しい……。




