ゾンビのキュウリ 【Picture】
「わしがひとつ、猫の皮を被ったイノセントな声でも上げれば、誰一人として、それを仕込みとは思うまい……。世紀の決定的瞬間の完成と言う訳じゃ。さぁ、となりの友の顔を見るが良いのじゃ。それが明日、お主が口にするキュウリをひり出してくれる者の顔じゃ。今の内に礼のひとつも言っておくが良いのじゃ。ゾンビ・カダーブルになってからでは、礼どころか『あー、うー』しか口にできなくなるからの。良かったのぉ~♪ お主たちは、ネットの中で永遠に、語り草になり続けることができるのじゃ」
男たちが口々に叫ぶ。
それだけは! それだけは! ……笑っては……いけない。彼らからすれば、ゾンビ・カダーブルにされると言うのは極刑以上の恐怖らしいのだから。
ちなみにヴィルマの言うキュウリ。
これはコンコンブル・ゾンビとか言う、ゾンビ・カダーブルを作る際に使用される毒のある植物のことだと後で知った……が、――どうでも良いか。
AKに弾を込め終わり、車内に転がっていたAKのマガジン5本を拾い上げ、ヴィルマの元に戻る。ペチェネグ……AKとマガジン共用できるとか優秀だな。
マガジンを互い違いに2本ずつ結束バンドで固定する。ビニールテープでもあれば1番良かったけど、別にこれでも構いはしないだろう。そのまま尻ポケットに2本を突っ込む。
東北の子供を脅かすナマハゲの様なヴィルマの脅迫。それを耳にしながら側で腰を降ろしていると、海から吹く風に生臭い匂いが混ざり――漂って来るのが感じられた。
* * *
「……で、デッドマンズ……チェストかな?」
海から現れたモノは、殻の直径が5メートルに達しそうなオウムガイ。
とは言っても、こんなデカいオウムガイが存在するなんて話しは、聞いたことも無い。
実物のオウムガイを見たことも無いし、詳しいことは分からないが――。




