その絵面……地獄
(……にしても、あへ顔って表現も大概だけれど……ベビー・ドールに、チアコス、それにスク水……む、むごい)
「スラムで……腹を空かせてた、ガキの俺を拾い上げて下さった……恩義に報いるため……なにが、なんでもボスを元に戻して貰うぞぉー!!」
吠えるや否や、カルデロン・ファミリーの彼の声を合図に男たちは、撃鉄を起こした。
* * *
同時に見物客も参列者も散り散りになって逃げ出す。俺も傍らのヴィルマを抱きかかえ、港に置かれて積み上げられていた、H型鉄骨資材の影に滑り込む。
脅しのつもりなのだろう、何発かが俺たちに向かって発砲される。
「出てきやがれえぇーっ! そして……さっさと、俺たちのボスを元に戻せぇーっ!!」
心中はお察ししますけどね? ハイそうですかとヴィルマを渡す訳にはいかんのですよ旦那方……。
「これはいけない……」
ヴィルマの口を借りてサムディ男爵が呟く――。
「どうしたんだ?」
指輪からデシレアが以前作ってくれた、ちょっとしたテーブルの様なサイズの長方形の大盾を呼び出し、バリケード代わりに男たちが発砲して来る側に向ける。
「私をお招き下さった、この小さなレディが……今の音で目を覚ましたようだ」
ヴィルマの身体が糸の切れた人形のように、ぐにゃりと崩れ落ちた。
そして直ぐに普段の表情を取り戻すとーー
「げぇほっ! げほげほげほっ! おあぁあっ……。ノドが……イガイガするのじゃ……お口がヒリヒリするのじゃ! ツガータお水! お水が欲しいのじゃ!」
状況分かってんのか? と言いたい所ではある……が、それを今日の彼女に言うのも酷な話に違いない。
再度の銃撃。男たちの声が張り上げられる。
「さっさと出て来やがれぇ!」
相手を確認するべく陶片をかざすと、
「ナイトショット・モぉ~ド♡」
可愛らしい声と同時に、状況が映し出された。
7人が手にしているのは……M4系列のなにかが1。それと……あれは……ペチェネグ? 形が似通っていて良く分からんが……兎に角それが1。ポンプガンが2。リボルバーが1、自動拳銃が2。




