〝マ〟の付く職業の皆さん
(そう言えばあの時、ネルが船に魔術師が乗り込んで来たとか言っていたな……)
実際は魔術師では無く、ヴードゥーの司祭らしいけれど。その辺の違いなんて、門外漢の俺らにしてみれば大した違いは無い。
多分、今回の騒動を引き起こした相手は、あそこで悠々と事態を観戦しているのだろう。
手出しのしようの無い海の上――これは、もうお手上げかな? と、考え始めていたところ。車2台が、港に猛スピードで乗り付け、ブレーキ音を響かせて急停車。
ギャングか、マフィアかと言った風体の男たちが、車から転がり出て来る。
手には、それぞれ雑多な銃器。ツォンカパたちとの付き合いがなかったら、その殺伐とした空気に呑まれてチビっていたに違いない。
「メトレス……メトレス・マリアァ! メトレス・マリアは、どこだァー!?」
やって来たお客さんは、どうやらここには居ない彼女を訪ねて来た方々のよう。とりあえず……どちらさん?。
ここまで一緒に着いて来た皆に絡む様に、メトレス・マリアの居場所を尋ねてまわるーー南国のヤの付く職業の方々。いや、ヤは付かないのか。マか、ギャが付く方々。
「……め、メトレス・マリアは来てねぇよ」誰かが彼女の所在についてを洩らす声「あの方は、ホレ、弟子のヴィルマに今回、全てをお任せになられた……」
(いきなり、チクってんじゃねぇよ)
問い詰めていたおじいちゃんの襟首を忌々し気に突き放すと、男たちはヴィルマに近づいて来た。派手な衣装に身を包んでいることだし、特定は、さぞかし楽だった事だろう。
数は7人。流石にマズイ。撃たれた所で、俺は痛い思いするだけで済むが、ヴィルマは、そうはいかない。
「てめぇが……メトレス・マリアの弟子、ヴィルマとか言う奴か……」
距離があった時には、それほどでも無かったが……やっぱり、間近に見ると存外にコアイ。
声をかけて来た男は、俺とヴィルマーー今はサムディ男爵の前に立つと、ブルブルと怒りに身を震わせ、用向きを口にした。
「俺たちのボスを元に戻しやがれえぇーっ!」
 




