ロリのお口から、テノール
振り返り見ると日が沈んだ街の、あちこちから集まって来たと思しい、残り物の特産品たちが群れて集っていた。その数――ざっと見たところで数百以上。メトレス・マリアから借りてズボンに突っ込んでいたレイジング・ブルを確かめ、ヴィルマから巻き上げて肩から提げていたAKー47を手にする。
「ちょーっと、多いかもですねご主人様? でも、ご主人様との契約ですから、これはお手伝いできませんよ? これで失礼しますけど大丈夫です? 契約内容の変更もできますが?」
アルパゴンの声に少し考え込む――
(AKー47の弾が22発、予備マガジンに30発……なんで8発無ぇんだよと小一時間……レイジングブルには、.500S&W弾が5発のみ。なんでこんなデカい弾詰めてんだメトレス・マリア……予備弾も無いし……ああ、一緒に寝た男の忘れ物な訳だ……察した察した。最後は「おちんちんシリーズ」だけど、こちらはスピード・ローダーが4つだから、合計36発+4発……)
全弾、1発も無駄弾を使うこと無く――特産品共を1体、1発ずつで始末できたとしても倍以上の数が残る計算。まぁ……無理に違いない。アルパゴンの故郷に篭って、数十年射撃の腕を磨きはして来たが、実のところ動く生肉を撃った経験なんて俺には無い。
メンタル面が、射手に大きな影響を与えることは流石に経験を積んで理解できていた。けれども俺のことだ。……そんな達人じみた偉業を成したりできるハズも無い。自信を持って言える。
あとは魔剣での大立ち回りになりそうだけど……絶対、途中で噛まれるよなぁ……。
不安になってヴィルマの方を一瞥すると、そこに彼女の姿は無く――いつの間にやって来ていたのか、こましゃくれた葉巻を吹かす黒髪は、俺の側に居た。
「……銃は必要無い。東洋からの客人よ」
その声は、いつものヴィルマの――子供らしい高音域のキンキン声では無かった。酒と煙草で、しゃがれた壮年の男性紳士と言った風情のテノール。




