カトリック? 【Picture】
非難がましい俺の言葉に悪魔が、この場から姿を消していた理由について説明する。
「色々、忙しかったんですよ? 工事現場からお借りした削岩機やコンプレッサーをお返しに行ったり? 勝手させて頂いた水道管を弁償させていただいたり? そのお礼に現場の皆様にお飲み物の差し入れに宿舎にお伺いしたり? あとは奥様方が御覧になりたがられるでしょうし、お喜びになられるだろうなぁ~と思いまして? このお祭の様子を撮影するために? 良い位置に建つ家の方にビデオを設置させて貰ったり? ご主人様のオモチャのドローンを陶片の皆さんに操縦して頂いて空撮をお願いしたり? えぇ、忙しくしていましたとも」
どういう訳だか、この悪魔と言うのは……ある意味、我が家の誰よりも常識にのっとった行動を忘れない奴であった事を思い出す。工事現場の皆さんへのお礼に伺っていた? すいません……アルパゴンさん。お手数……お掛けしてます。気の回らない主で……ゴメンね?。
ヴィルマを取り囲む人垣の内側から、屠られる黒山羊が耳をつんざく、断末魔の声を響き渡らせる。錆の浮いた切れ味の悪そうなナイフでギコギコと切り裂かれた喉から、吹き出す血を調理用のボウルに集め――それを参列者同士が恍惚とした表情で、お互いの額に塗り付け合う、世に聞くヴードゥーそのものの光景が展開され始めていた。
「オイ……アルパゴン。お、お前……さっき、カトリックの聖人が……なんだって?」
この眼前の光景のどこに、キリスト教要素があると?。すると悪魔は、戸惑う俺を余所に滔々と。
「人間の決めたことなんて私、知りません♪ でも、このお祭りで祀られているサムディ男爵と言うのが、聖人として扱われているのは本当ですよ? まぁ……ヴィルマさんが信仰する このヴ―ドゥ―と言うものは、西アフリカから奴隷貿易で拡まった信仰の形態らしいですし? 白人たちは色々と怖かったんでしょうね。人間って本当に……もう♡ 愛おしいほど愚かな生き物♬」




