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ヴ―ドゥ―・ダンサー

「……いいかい? ラファエル。腐った頭って奴は、こうやって……潰すんだっ!」


 周辺に、まばらに残っていた特産品の頭を――躊躇いもなくバットでフルスィング。濡れた雑巾でも殴りつけたかのような音を響かせて、カッ飛ばして見せるラファエルくんのパパ。


「すげぇ! パパ! すげぇよ! パパは、本当にカリブ一のスラッガーなんだね! 僕も! 僕も()る!」


 父としての威厳と自信を湛えるパパさんは笑い、息子さんの頭を撫で――


「よぉっし……それじゃあ次の腐った頭を、どっちが先に見つけるかパパと競争だ」


 とても微笑ましい仲睦まじい親子の語らい。そして彼は特産品を捜しに、建物と建物の間の路地へと、愛する我が子の手を引いて消えて行く(…………)。


 オカシイ……異界シルウェストリス以上に、このアンティグア・バービュータと言う土地の方が、遥かに異界に思えるのは、どういうこった……。


 目にした親子のやり取りに呆然としていると、教会の周辺には大気、光球、太陽の核を表す「マンマン」「セコン」「ブ・ラ」とか言う3種の太鼓を抱えて、愉し気な声を響かせ、集まって来る人たち。生贄の供物なのだろう、このあとの自分の未来が分かっているのか、辺りをつんざく、甲高い鳴き声を上げるブタさんを連れて来る人たち――バーベキュー・グリルで肉を焼き、一緒に酒を振る舞う人々たちで、ごった返し始めていた。


 苦手な人熱(ひといき)れに、もみくちゃにされることしばらく。集まった人たちが一斉に教会の入り口に注目し、歓声を上げる。


 皆の視線の先を見るとそこには、初めて出会った際に身に着けていたような、肌も顕わな衣装に着替えたヴィルマの姿。メトレス・マリアが施してやったのか、それはどうかは分からなかったが――その幼い顔には気合の入った化粧が施され、別人を思わせる凛とした空気が、そこには漂っていた。

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