お猿さんの如く
入居時にネット通販で買った、安いパイプベッドで微睡んでいると、お腹を空かせて目が覚めたのか──ネルは手を伸ばしてベッド脇をゴソゴソ探ると、アタリメのパックの残りを口に放り込んで、モグモグしていた(賞味期限……大丈夫……か。乾物だしな)
ネルから漂う生臭いゲソのスメルを満喫して、ぼんやりと天井を見上げる。
「あ〜起こした?」
気にする必要もないことを告げるべく、身体を起こすと 頬に、鼻をくっつける。
(凄いゾ。童貞時代には考えられなかった進歩だ。なんとゆー余裕だ)
などとお粗末極まることを考えていると、こちらを見透かすような視線で、ネルからの「……もう20〜30回する?」お誘い。
誘われるままに唇を重ねようとしたところで――ふと、我に返る。
……へっ? 待っ……て? に、20~30回だぞ? 何を俺は
「ヤレヤレ……仕方が無いな」
──みたいな感じで? ……身のほど知らずなイケメン風を吹かせて、イタすことを前提に、リブートさせようとしてるんだ? 俺の1日のセルフ・レコードの、数倍以上の回数だぞ?。
てか……このところ……。
ここ幾日かネルと過ごした、濃密過ぎる睦み合いを思い返す。
俺は、何も食べていないどころか……水すら飲んでない……ぞ?
この夏の日に──。
* * *
相変わらず俺が思ったことを、手に取るように把握できるのかネルは
うつ伏せに寝転んで、口の端から、はみ出させたゲソを愉しそうにピコピコさせながら、こちらを見ている。
「……よし、こういう時はアレだ」
「セぇーーーーーーっクス☆」
「……うん、違うからね? ネルさん? ちょお〜っと違うよぉ? 今から、ちょっと……考えごとするから、少ぉ~し、静かにしててねぇ?」




