あの? オークさ……ん?
「貴様が手にする……」
「『もののぐ』では無い! 必要な物は『杣木』!『闘諍』する気は無ぁし!」
――その次の日――
「貴様が……」
「『もののぐ』じゃありませぇ~ん@『杣木』が要るんです~ぅ♪ 闘わなぁ~い♬」
――さらに、次の日――
「ki……」
「『杣木』! 闘わん! 闘わんよぉ!」
ここまで来ると、最初に出会ったその日に感じた、恐怖感は感じなくなり──もう、オークとのやり取りは、ルーチンワーク以下のものに成り下がっていた。そしてオークの方も俺が、問答に対して、違う返答をすることが無いことを、理解しているようにも感じられた。
「……おぉ」
オークは いつものやりとりを交わしたあと、深い嘆きの声を吐き出した。片手で顔を覆うと、立木を背に力無く座り込む。
「……えぇっと。オ、オークさん?」
「………………」
「どうかしました……かね? なんだか傍目に見て、落胆っぷりが……凄い、痛ましいんですけども?」
このところ毎日会話していたことで恐怖を忘れていた俺は、先日だったら絶対に有り得ないことに……自然と、オークに話しかけていた。
なんのためにオマエは、オークの言葉を覚えたんだ? と言う無神経な問いには、こう応えよう! オークに襲われたりして、物陰に隠れている時! 耳にした会話内容が、理解できるかどうかで、逃げ果せる確率が上がる……かも、知れないじゃない?
……俺は、誰を相手に、必死に言い訳をしてるんだ?
さておき。オークは、外見に似つかわしくも無い弱々しさではあったが、口を開いてくれた。
「……た」
「……た?」
「………………戦う……相手が……欲し……い」
「お疲れ様ぁーーーーーーーーーーーーっっっしたあぁ!」




