南の島の特産品
やはり、育ての親の元が落ち着くのだろう。……あの環境に、あいつを置くと言うことには、少しどころか大きな頭痛を伴うことではあるけれども――。
何故か俺とネルの部屋に入れ代わり、立ち代わり――やって来る屋敷の面々。それぞれに、あてがわれた部屋にしたって、負けじ劣らじのラグジュアリーな部屋なのだろうに……。
街に出掛けては一気に彫り上げさせたと言う、トライバル模様のタトゥーを、自慢げに貴族の娘たちと、メイドに披露するウルリーカ。腫れあがった肌の痛ましさに顔をしかめさせるメイドさんに、見世物小屋の「ナニか」を鑑賞する様に、珍しいモノを見る目で感嘆の声を上げるデズデモーナ。
火山のトレッキング・ツアーで撮影した写真を自慢げに見せるアスタに、静かに写真を覗き込み――なにかを血眼に探し始めるメルトゥイユ。
同じ騒々しい毎日であるにしても……なんかもう、ここに住みついちゃいたい。
「失礼いたしますよぉ~♬」部屋に入って来た悪魔は上機嫌。悪魔すらを浮かれさせるヴィルマの故郷。色々と凄すぎる「ハイハ~イ♬ 皆さ~ん? 注目して下さ~い♪ 本日の街へのお出かけは、お控え下さいね~? 特産品です特産品。死体が起き上がって、人を襲っていますからね~? 警察も軍隊も出てますし危険ですよ~? 外出はダメですよ~? それでは失礼をば。あぁ~、忙しい忙しい」言いたいことを言い終えるや、ドアを閉めて立ち去って行く。
部屋に差し込む日差しと、バルコニーから臨む宝石色の海の色に呆け、俺は冷蔵庫から良く冷えたシメイ・ビールの瓶を取り出して、キャップを剥がし――添加されたラズベリーのフレーバーが立ち昇る飲み口に、口を付けていた。
「げふっ……さて、今日は何をしようか……」




